「平内ホタテ活御膳」の立役者・ベイビー畑井氏に聞いた、この10年と未来への希望

平内町最大の地域資源である陸奥湾産ホタテを、「活貝」の状態で提供することにこだわった、新・ご当地グルメ「平内ホタテ活御膳」をご存じでしょうか。単にホタテ料理を出すのではなく、刺身をはじめ、焼き物、フライ、ホタテの出汁が効いた味噌汁など、調理法ごとに異なる美味しさを詰め込んだメニューです。2015年のデビューから10年を経て、改めて当時のこと、そして今後の展望を「平内ホタテ活御膳」開発の立役者”ベイビー畑井”こと畑井幸治さんに伺いました。
ホタテを食べられる店がなかった

「平内町は“ホタテで有名な町”と言われながら、地元で気軽に食べられる店が少ないという課題がありました。観光客だけではなく、県内から訪れた人に『ホタテが食べられる店は?』と聞かれるたび、満足に答えられない現状を何とかしたい。そんな思いが、すべての出発点でした」と語る畑井さん。ホタテ料理専門のレストランを作ろう!との思いがふつふつと湧き上がってきたのと同時に、まずは名物となるホタテ料理を作りたいと考えていたそうです。転機となったのは、2013年に深浦町で誕生した「深浦マグロステーキ丼」でした。
「深浦マグロステーキ丼のプロデュースをしていたヒロ中田氏に会いに行きました。平内町の特産はホタテだと伝えると、彼はホタテを使ったメニューをすでに手がけたことがあったようで最初は興味がない様子…。そこで養殖ホタテで水揚げ日本一、一年中ホタテがあることを伝えると一転、とても興味を示してくださいました(笑)」
「新・ご当地グルメ」とは
地域資源を発掘・再構築し、独自のPR戦略で全国的なブームとなった「新・ご当地グルメ」。その仕掛け人である北海道じゃらんの前編集長・ヒロ中田氏は、北海道美瑛町で産声を上げた「美瑛カレーうど ん〈つけ麺〉」を皮切りに、全国に数多くの「新・ご当地グルメ」を誕生させました。
ホタテの魅力を余すことなく伝える

かくしてプロジェクトが動き始めます。まずは講演会を開催し、やる気に溢れた飲食店関係者が集まり、平内町発の「新・ご当地グルメ」開発に向けた月1回の会議がスタート。
「しかし、開発は決して平坦ではありませんでした」と、当時を振り返る畑井さん。ヒロ中田氏は妥協を許さず、試作品は次々に却下。料理人たちは悩み、時には心が折れそうになりながらも、約1年をかけて改良を重ね続けました。そして、最終的にたどり着いたのは「活ホタテ」を主役としたメニューの構成でした。

こうして2015年、「平内ホタテ活御膳」が正式にデビュー。その後、2018年には念願の「平内町ご当地レストラン ホタテ一番」もオープン。「メニューは毎年マイナーチェンジを重ねながら提供を続けています。累計提供数はおかげさまで10万食を超えました」。現在は、「深浦マグロステーキ丼」「中泊メバルの刺身と煮付け膳」「田子ガーリックステーキごはん」「東通天然ヒラメ刺身重」など、青森県内の新・ご当地グルメと並び、着実に地域の定番として根付いています。
ホタテを“食べる”だけで終わらせない

畑井さんの活動が目指しているのは、単なるグルメ振興にはとどまりません。近年は、中学生を対象にした「食育」にも力を入れているそうです。2025年には地元中学校で、ホタテを使ったレシピを考案してもらう「H-1グランプリ」を実施。全校生徒がグループに分かれ、ホタテを使ったオリジナルレシピを考案。その中から選ばれたレシピは、実際に「ホタテ一番」で期間限定メニューとして提供されました。「次回はより多くの子どもたちが楽しめるよう、学校給食での提供も視野に入れています」と畑井さん。地域の子どもたちへのホタテの魅力普及にこだわる理由を伺うと「ホタテの育て方や生態を知り、味わう経験を通して、子どもたちにホタテをもっと身近に感じてほしいんです。将来、町を離れたとしても、『自分の地元にはホタテがある』と、誇りを持って語れる人が一人でも増えれば」と語ってくれました。
地域バカであることが原動力

畑井さんは「地域バカ」と紹介されていることが度々あり、その理由について伺うと「地域で新しいモノを作ろうと思ったら、批判されても、突き進まないと生まれない。そんなの地域バカじゃなきゃやれないと思うから」と、はにかむ畑井さん。
畑井さんは建築の道から平内町職員になり、水産、観光、商工と幅広い分野を経験。その中で一貫していることは「この町が好きだ」という思い。「海と四季を感じられる自然をみるとホッとしますね。生まれ育った町を、そしてホタテという地域資源を次世代につなぐため今後も向き合っていきます」。プロジェクトの立ち上げから10年が経過した今を「まだ通過点に過ぎない」と語る畑井さん。地域の未来を見据えながら、挑戦は今も続いています。
プロフィール
ベイビー畑井(べいびー・はたい)/本名・畑井幸治。1971年、平内町出身。平内町水産商工観光課課長。新・ご当地グルメネットワークあおもり(S-1あおもり)メンバー。「夏は貝柱が大きく、冬は卵を抱え、味噌汁などその時期ならではの楽しみ方があります」と畑井さん。一番好きな食べ方は「活ホタテの刺身」で、フライも贅沢で美味しいとのこと。
この記事を書いた人:
ひらないホタテ貝議事務局 ディレクター/門脇寿英



