宮城の海と共に。観光×環境という視点でつくる「牡蠣殻クラフト」~貝殻のアップサイクル事例~

牡蠣とホタテ。どちらも二枚貝であり、食用として非常に人気があるという共通点があります。一方で貝殻のほとんどは再利用されず廃棄されているという共通点も…。特に宮城県の牡蠣類養殖収穫量は18,200トンで、このうち約8割が殻として発生しているそうです。
「この大切な地域資源にもう一度いのちを宿して、宮城の海の宝を未来に繋げたい」という思いで牡蠣殻のアップサイクルに取り組む女性がいます。今回は宮城県七ヶ浜町で廃棄される牡蠣殻(松島産)を活用し、美しい牡蠣殻クラフトを生み出しているatelier K 代表の加藤里衣さんにお話を伺いました。
松島の牡蠣殻との出会い

およそ7年前から牡蠣殻を使ったアクセサリー作りを始めた加藤さん。東日本大震災で自宅が全壊した経験から、復興へ繋がるような取り組みがしたいと活動を始められました。「地域のものを使ったものづくりで、地域を元気にできないかと考えていました。そんなときに松島で廃棄された牡蠣殻の山を目にして、これに新たに命を吹き込んで作品にできないかと思ったことがきっかけでした」。加藤さんは、さっそく地元漁師から牡蠣殻を譲り受け、アクセサリー作りをスタート。ブランド名はイタリア語で「牡蠣」を意味する「OSTRICA(オストリカ)」と名付けました。
前例のなかった牡蠣殻アクセサリー作り

牡蠣殻でアクセサリーを作ろうとしたものの、当時は前例がなく、加工の仕方を調べてもまったく情報がなかったんだとか。大変だったのでは?という問いに対して「逆に良かったです」と加藤さん。「確かに試行錯誤の連続で加工もめちゃくちゃ大変でした(笑)。でも、『諦めずに乗り越えたら地域の未来に繋がるようなアクセサリーが作れるかも』というワクワクの方が勝ってましたね」と語ってくれました。

牡蠣殻クラフトの制作にはだいたい1年半を費やします。漁港から仕入れた牡蠣殻は、付着したフジツボや海藻などの不要物を風化させて取り除きやすくするため、まずは1年以上かけて天日干しを行います。その後も煮沸と天日干しを何度か繰り返し、ようやく研磨・装飾の工程へ進むそうです。「牡蠣って真珠層がとても薄いので、特に研磨の作業中は神経を集中させています。あともうちょっとで終わりそうというときに割れたり、ヒビが入ったりすることもありますが、苦労の甲斐あって今では多くの作品を送り出し、たくさんの方に手に取っていただいています」。と加藤さん。様々な工程を経て生まれた世界に一つだけのアイテムは、松島の月や海などをイメージしており、中には「宮城を離れた家族に故郷を思い出してもらうための贈り物として購入しました」という素敵な声も寄せられているそうです。
環境に配慮した牡蠣×雑貨

「アクセサリーだけだとやっぱり使う方を限定してしまうので、いろんな方法を試しながら牡蠣殻のアップサイクルに繋げていければと思っています」と加藤さん。2023年からは焼成なしに陶器のような雑貨が作れる新ジャンルのハンドクラフト「牡蠣殻エコレジン(トレイ3,300円~/キーホルダー3,850円)」、国産古紙に牡蠣殻を混ぜた「宮城の牡蠣殻入り紙コースター(3枚入り1,023円)など、環境に配慮した雑貨づくりも行っています。

「牡蠣殻エコレジン」は、石膏などに細かく砕いた牡蠣殻のフレークを混ぜ合わせて作っています。型に流して乾燥したものを1点1点やすり掛けを行い、蜜蠟が主成分のコーティング剤で仕上げています。浮かび上がる牡蠣殻の表情をより際立たせる加藤さんこだわりのカラーバリエーションにも注目です。

「宮城の牡蠣殻入り紙コースター」は、フレーク状の牡蠣殻をさらに細かくしたものを混ぜて漉き、無漂白・無着色のため土に還る環境にやさしい製品です。松島をイメージした 牡蠣、松、月の箔押しがアクセントになっており、紙製ですが撥水性があり繰り返し使えるのもポイントです。
今後の活動について

「観光×環境という視点で牡蠣殻を使った新しい観光コンテンツを作りたいと考えています。松島には観光の柱がたくさんありますが、この先も永く存続するためには新たな取り組みも必要だと考えています」と語る加藤さん。昨年の秋から、宮城県松島高等学校の観光課で「カキ殻の再利用と地域活性化」をテーマに講師を務めるなど、地域の人と共に未来に繋がる活動を精力的に行っています。

最後に加藤さんにホタテ貝について所感をお伺いしてみました。
「松島の牡蠣養殖には、ホタテの貝殻が採苗器として使われています。他の海で育ったホタテが宮城に来て、新しい牡蠣の命を育てるために使われている。そういう命のバトンが繋がっていると思うと感動的ですよね。私も捨てられてしまう牡蠣殻に、また新しい命を吹き込んで作品作りを行っているので、ホタテも牡蠣も、身だけじゃなくて殻も含めて無駄にならないような取り組みを一緒にできたらいいなと考えています」
プロフィール
加藤里衣(かとう・りえ)。岩手県釜石市出身。宮城県七ヶ浜町在住。atelier K 代表。2009年、結婚を機に七ヶ浜町に移住。オリジナルの牡蠣殻クラフトの製作に着手し、2019年3月から本格的に販売スタート。ブランド名は「OSTRICA(オストリカ)。」現在は宮城県松島高等学校の観光課で講師も務めている。
<お問い合わせ>
atelier K
https://www.instagram.com/atelier.k2018/
この記事を書いた人:
ひらないホタテ貝議事務局 ディレクター 門脇寿英(文/写真)