コロナ禍、ほたての不漁を乗り越える覚悟と思い。「ホタテ一番」南川シェフの挑戦

新・ご当地グルメ「平内ホタテ活御膳」をはじめとした様々なほたて料理が味わえると人気の「ホタテ一番」。日本初のご当地レストランとして2018年5月にオープンしました。しかし近年、海水温上昇などの影響でホタテの不漁が続き、看板食材が思うように確保できないという厳しい現実に直面しています。主役不在とも言える状況のなかで、店の灯を守り続ける理由とは何か。挑戦を続ける「ホタテ一番」オーナーシェフ・南川直樹さんにお話を伺いました。
引き受けた理由は「恩返し」

新・ご当地グルメ「平内ホタテ活御膳」デビューから2年後の2017年、東通村にも新・ご当地グルメ「東通天然ヒラメ刺身重」がデビューしました。南川さんはその立ち上げに携わった中心メンバーの一人であり、シェフとしてその誕生を支えました。その縁から、プロデューサーのヒロ中田さんや、新・ご当地グルメネットワークあおもり(S-1あおもり)のメンバーとも、メニュー開発会議などを通じて親交を深めてきました。
2018年、平内町では「ホタテ一番」がオープンしますが、1年後に運営していた企業が撤退し、休業に追い込まれることに。そんな折、新・ご当地グルメの仲間たちから「やってくれないか」と打診されたと言います。「自分の店の経営もあったので最初は悩みました。それでも決断したのは、東通天然ヒラメ刺身重の開発の時に支えてくれた平内町の仲間たちへの恩があったからです」。

レストラン経営を引き継ぐことを決め、2020年6月にホタテ一番は再びオープンを果たしました。しかし、そんな矢先、思いがけないことが起こります。世界中を揺るがしたコロナ禍が直撃したのです。「団体予約はすべてキャンセルで資金も人手も足りない。それでもメニュー開発は進めなければならないという状況で、逃げたいと思ったこともあります」と当時を振り返る南川さん。それでも踏みとどまったのは「一度受けた恩は返さなければ」という思い。国の補助金などを活用しながら、前を向き経営を続けてきました。その覚悟と決断が、いまのホタテ一番を支える土台となっています。
ホタテ一番の新メニューづくり

ホタテ一番では、定番メニュー以外にも毎年新商品を投入しています。メニューの数は10品に固定し、人気上位の5品を残して、毎年下位5品を入れ替えるという仕組みです。新商品はプロデューサーであるヒロ中田さんとの協議を重ねながら、試作と検証を繰り返して開発をすすめます。「まずはやってみる。無理かどうかは、そのあと判断するの精神です」と南川さん。これまで積み重ねてきたメニューは、ほたてを軸にしながら常に変化を続けてきました。
しかし今、主力食材のほたては厳しい状況にあります。海水温上昇の影響で漁獲は不安定。冷凍在庫すら不足し価格も高騰しているため、来年度は通年メニューから外す可能性もあるといいます。それでも「ほたてがある時期だけでも出します。絶やさないことが大事なんです」と言い切る。旬にわずかでもほたてが入荷できれば、臨時メニューで出すなどの対策を講じています。

ここで2025年4月から提供されているホタテ一番のメニューをご紹介します。活ホタテを多く使用する「新・ご当地グルメ・平内ホタテ活御膳(1800円)」、「青森長いも&ホタテ・マグロの海鮮三色丼(1900円)」は現在お休み。「ホタテの鉄板ステーキ付き寿司御膳」「貝焼き味噌定食」などは注文可能になっています。
※2026年4月以降はメニュー改定のため未定
<提供をお休み>
●新・ご当地グルメの「平内ホタテ活御膳」(1800円)
●「青森長いも」&ホタテ・マグロの海鮮三色丼(1900円)
<提供可能>
●炙りホタテの彩り海鮮ちらし重(1700円)
●ホタテの鉄板ステーキ付き寿司御膳(2300円)
●ホタテ・マグロ・サーモン等「にぎり寿司ランチ8点盛り」(1700円)
●「青森ニンニク」&ホタテの俺のペペロンチーノ(1700円)
●「青森ゴボウ」& ホタテの北のチャンプルー定食(1300円)
●「青森リンゴ』 & ホタテの焼きリンゴカレー(1200円)
● ホタテ&タラの貝焼き味噌定食(1100円
●陸奥湾ホタテ殻付き塩ラーメン(980円)


筆者も「ホタテ&タラの貝焼き味噌定食」をいただきました。青森県を代表する郷土料理「貝焼き味噌」を、贅沢にアレンジした一品です。大ぶりのホタテとタラを、コクのある味噌でふっくらと煮込み、素材の旨みを存分に引き出しています。やさしく奥行きのある味わいは、思わず箸が進むおいしさ。炊きたてのご飯との相性も抜群です。
ピンチをチャンスと捉えて

「ホタテの復活には数年かかるかもしれません。でも逆にチャンスと捉え、ほたて以外の地元食材にも目を向け、メニューづくりの可能性を広げていければと考えています」と南川さん。困難な状況を前にしながらも、そのまなざしは常に未来を見据えています。
最後に南川さんに一番好きなホタテの食べ方を伺いました。
「陸奥湾のほたてなら、やっぱり刺身ですね。すごく甘くて、旨味が凝縮していますよね。逆に野牛漁港のほたては、身が大きいのでフライで食べるのが好きです」
コロナ禍やホタテの不漁という逆風に直面しながらも、支えてくれた人々への恩を胸に、前向きな挑戦を続ける南川さん。困難を力に変えながら歩みを止めないその姿勢が、ホタテ一番の未来を切り拓いています。これからのさらなる展開に、ぜひご期待ください。
プロフィール
南川直樹(みなみかわ・なおき)。青森県東通村出身。東通ヒラメ料理推進協議会会長を務め、新・ご当地グルメ「東通天然ヒラメ刺身重」の開発にも深く関わる。2020年6月より平内町ご当地レストラン「ホタテ一番」オーナーシェフとして、ほたて料理の提供に奮闘している。
お問い合わせ
平内町ご当地レストラン ホタテ一番
https://hotateichiban.com/
「平内ホタテ活御膳」
https://www.hiranaihotate.com/
〒039-3372 青森県東津軽郡平内町大字土屋字鍵懸56
TEL:017-764-0251(ひらないまるごとグルメ館)
<営業時間>
【4月~10月】11:00~15:00(L.O. 14:30)
【11月~3月】11:00~14:30(L.O. 14:00)
定休日:毎週水曜日および年末年始
この記事を書いた人:
ひらないホタテ貝議事務局 ディレクター/門脇寿英



